ランカスター家とヨーク家が争う薔薇戦争の最後の戦いが終わり、勝利したヨーク家のエドワード四世が王座につき、ようやく平和な時代が訪れた。
王の弟、グロスター公リチャードは一人、屈折した思いを胸に、密かに大きな野心を胸中にふくらませていた。先ずはじめに次兄クラレンス公ジョージをでたらめな話を流し、その兄王エドワード四世との絆を断ち切らせる。そしてロンドン塔に幽閉、間もなく刺客に殺害させる。
次にリチャードは、かつて絶大な力を誇ったウォリック伯の末娘、アンとの結婚を狙う。アンはヘンリー六世と王妃マーガレットの王子エドワードの未亡人であった。しかも、ヘンリー六世とエドワードを殺した当事者であるリチャード本人が、その葬列に立ちはだかり、正に喪に服し嘆いているアンに求愛、最初はリチャードを突放すアンの心を引っくり返し、結婚の約束をさせてしまう。
病床のエドワード四世は妃エリザベスと有力貴族であるヘイスティングズやバッキンガム公、そして見せかけのリチャードとの和解を実現させたとおもいきや…王命撤回が間に合わずクラレンス公ジョージが既に処刑されて果てたとの知らせを受ける。王にとってその衝撃は大きく、悲しみにくれて崩御。
王の死後、リチャードは腹心となったバッキンガム公とともに王位簒奪に向けてさらに拍車を駆ける。
王妃エリザベスの弟たちや有力貴族たちを逮捕して処刑させる。二人の幼い王子エドワードとリチャードをロンドン塔に幽閉。さらに王子エドワードを推すヘースティングズ卿を処刑させる。
巧みな策略で次々と有力者たちを蹴落としたリチャードは、バッキンガム公に自分を王にとロンドン市民を煽らせ、市民の懇願に押され仕方なく受けるとの見せかけの大芝居をうって遂に王座ついた。彼は今や、リチャード三世となったが、不安にかられる日々を送る。ロンドン塔の二人の王子の存在が気がかりで、バッキンガムに王子殺害をほのめかすとバッキンガムはこれに躊躇し、かつての約束で実現されていない恩賞の話をもち出す。ここでリチャードはあっさりバッキンガムを見放す。王子殺害は別の男、ティレルに実行させる。また王位につくために結婚したとした妻アンもいまや役目を終えたとばかり、殺害させる。今度はエドワード四世の王女エリザベスに目をつけていた…。
バッキンガム公を逮捕し、処刑させたのも束の間、リチャード三世にたいして大きな反乱が勢いを増し、リチャード三世はこれに立ちむかうことになる。
反乱軍を率いるのはランカスター家のリッチモンド伯であった。ボズワースの決戦の前夜、それぞれ二人の眠る陣内にリチャードが殺害した人達の亡霊が現れる。リチャードには「絶望して死ね」の呪いのことばを、リッチモンドには「生きて栄えよ!」の祝福を伝え消えて行く。
リチャードは不利にな状況に陥るも「馬をくれ、馬を!馬のかわりにわが王国をくれてやる!」と絶叫しつつ死にもの狂いの勢いで戦い、相手を次々に倒していくが、ついにはリッチモンドに打たれ、果てる。リッチモンドがヘンリー七世として王位につき、王女エリザベスを妃として迎えることになる。この結婚で赤薔薇(ランカスター家)、白薔薇(ヨーク家)が固く結ばれ、ふたたびイングランドには平和が訪れたところで幕。