一心に貫いていくある女性の愛の物語。その女性の名はヘレナ。
思い焦がれるその相手はロシリオン伯爵、バートラム。身分違いの叶うはずのない恋。バートラムはフランス国王にお仕えするため、パリへ。別れの悲しみに涙するヘレナ。だが、ヘレナにあるひらめきが…。ちょうどそのころ、フランス国王は不治の病で、死を覚悟しつつ日々を過ごしていた。ヘレナは亡き父(かつての名医)が遺した処方箋を使い、王に治療を施すことを決意する。幸い、バートラムの母であり、ヘレナの(両親の死後)育ての親でもある、ロシリオン伯爵夫人の理解と絶大な協力を得、すぐさまその後を追ってパリへ向かう。なんとか王に謁見し、必死に王を説得する。王はその熱意におされ、治療を受けることに。ただし…治療に大成功してヘレナ自身が望む王の臣下の一人と結婚するか、失敗しヘレナが命を捧げるかの二つに一つの大仕事。これもバートラムを愛するがゆえ…。奇跡的に王の病は全快し、ヘレナはバートラムを望み、二人は夫婦となる。しかし、王命で渋々結婚した夫バートラムはヘレナから離れ、イタリアの戦場へと発ってしまう。「私の指輪を手に入れ、私の子を生むときに初めて、私を夫と呼ぶがいい」という内容の置手紙をヘレナに残して…。ヘレナは巡礼姿で彼を追ってイタリアへ。バートラムは彼の地でダイアナという女性にくり返し求愛していた。ヘレナはイタリアに着いてすぐにそのことを知らされる。なんと偶然出会った…当の本人ダイアナとその母親から。しかも、ヘレナが宿泊する予定の宿の主でもあった。ヘレナはこの親子と親しくなり、自分が彼の妻であることなどすべてを語る。そして、ヘレナの燃える愛の次なる策は…ダイアナにバートラムの求愛を(表面上は)受け入れさせ、愛の逢瀬の約束をしてもらう。その愛の逢瀬には約束事を添える。“逢瀬は暗闇で顔も見えない中であること”“証としては彼の指輪を女性がはめていること”ダイアナはヘレナのことばどおりに事を運ぶ。逢瀬の日はすり替わる…ダイアナとヘレナ、ヘレナはバートラムとベッドで愛しあい、かつて治療の御礼に王から賜った指輪を彼に贈る。そんなこととはつゆ知らず、ヘレナが巡礼で亡くなったという噂を信じ、フランスへ帰国したバートラムには老貴族ラフューの娘との結婚話が持ち上がっている。フランスでもヘレナが亡くなったという噂をだれもが信じていたのだ。バートラムがラフューにさし出した指輪を見て王はバートラムを疑い、逮捕。その指輪はかつてヘレナに贈ったものであったのだから。不吉な考えが王の頭をよぎる。そこにダイアナとその母親が現れ、バートラムが指輪を餌に操を奪ったと、その指輪を証拠に告発。益々不利になるバートラム。彼はなんのかんのと取り繕う。彼の従者ペーローレスも頓珍漢な証言をしたりで、一同、困惑の極み。そこでダイアナは最後の切り札、保釈の保証人を呼ぶ。登場したのは死んだはずのヘレナであった。一同、仰天する。バートラムの子を身籠ったヘレナ自身によってすべてが明かされ、バートラムもヘレナに本物の愛を捧げ、“終わりよければすべてよし”で幕となる。