古の詩人ガワーが生き返り、ツロ国の王ペリクリーズの話を物語る。

人々に愛されながらも、あらゆる艱難辛苦を受け、それを越えていく勇ましい王の物語。

ペリクリーズは命を狙われるという危難を逃れるため、海に出るも、嵐に遭い、船も従者もすべて失う。彼一人ペンタポリスの浜辺に打ち上げられる。土地の漁師たちに助けられ、その国の名君として君臨する王の宮廷で、お姫様目当ての槍試合が催されることを知る。その勝負に!と、ペリクリーズは立ち上がった。

王の名前はサイモニディーズ、漂流物で漁師たちが海から引き揚げた錆だらけの鎧(ペリクリーズの父の形見)を着たペリクリーズは、見事、槍試合を征し、姫セーザとめでたく結ばれる。懐妊したセーザを連れて祖国ツロに帰る途中、ペリクリーズは再び嵐に襲われる。妻は嵐の船上で、娘マリーナを出産するも、息絶える。ペリクリーズは船の上に死体があると波も風も収まらないという言い伝えから、泣く泣く妃の遺体を柩に入れ、海へと流す。また、生まれたばかりの赤子にはツロまでの長旅は無理だと判断し、タルソ国の太守クリーオン、その妻ダイオナイザに娘を預けることにする。妻と娘から引き離されたペリクリーズはその後、無事ツロに帰国する。一方では奇蹟が…。セーザの柩がエペソスという地に流れ着いた。人徳高い医者のセリモンの手厚い看護により、人々が見守るなか、王妃はなんと息を吹き返す。その後は、自分は夫も子も亡くした身と思い、エペソスのダイアナの神殿へ入り、尼になる。マリーナは身も心も美しく成人し、人々の驚嘆と称賛の的である。これをひがみ嫉妬したダイオナイザは、夫と共謀し、マリーナ殺害を謀る。これは未遂に終わるも、マリーナは海賊にさらわれ、ミティリーニ国の女郎屋に売られてしまう。娘会いたさにタルソへやってきたペリクリーズであったが、クリーオン夫妻に娘は死んだと聞かされ、そのショックのあまりに、船の上で、廃人と化す。あるときペリクリーズの船がミティリーニの沖に、その地の太守ライシマカスの目に留まる。ライシマカスは王に謁見する。王は誰にたいしても口を閉ざしていた。そこで、ライシマカスは(かつての遊び心から女郎屋で)見初め、また自分を改心させてくれた清きマリーナに王の心を解きほぐすことを要請する。そしてこのマリーナこそ、わが娘とわかり、親子感動の再会。またペリクリーズはライシマカスと娘の結婚を認める。ペリクリーズは夢で女神ダイアナより“神殿に行き、己が人生を物語れ”とお告げを受く。ダイアナのことばどおり、娘と婿、忠臣ヘリケーナスらを連れ、エペソスへ。その神殿で、受けし艱難辛苦を物語っていると、ある修道女が感極まってその場に倒れ伏す。その女性こそ、海で亡くなったはずの妻セーザであった。生死をも越える感動の再会、一族がまためぐり会う奇蹟がおこる。

ガワーはこの物語を自分の物語そのものとして語り終えると、あらゆる人の幸福を願いながら、消え果てる。