イギリス国王ヘンリー8世の治世、枢機卿ウルジーの勢力が大きい。陰謀によって、敵対する勢力を蹴落とし出世していく強欲なウルジーを人々は、快く思っていない。人望ある高貴なバッキンガム公も、彼の策略により、裁判にかけられ、死刑となる。
一方、ヘンリー8世は、アン・ブリンを見初め、求愛する。そして、王妃キャサリンとの離婚を望む。裁判の日、キャサリンは、涙ながらに、それは不当であると主張し続けるも、聞き入れられずに、法廷を去る。ウルジーも腹の中では、この王の再婚が自分には不利な状況になると判断し、ローマ法王へ手紙で、離婚の承諾をできるだけ引き伸ばすようにと願い出る。しかし、その手紙が誤って、王の手に渡り、合わせて、法王職を得るために、国の莫大な財産から密かに流用していたことの証となる目録も、王の手に渡り、見られ知るところとなる、遂にウルジーは失脚する。
王妃キャサリンとの離婚、アン・ブリンとの結婚が正式に決まり、アン・ブリンは民衆も祝福するなか盛大に戴冠式が行われる。キャサリンは病気で弱り、身の周りの世話をするごく少数のものに別れを告げ、娘の幸福を願い、あの世へと旅立つ。
ウルジーの後を受けて、国王の寵愛を受けていたキャンタベリー大司教クランマーは、異端とされ告発される危機に見舞われるが、無事に潔白であると国王に認められる。このあたりから国の情勢が上昇気流に。そして、ヘンリー8世とアン王妃には王女が誕生する。のちのエリザベス1世。クランマーがエリザベスと命名し、イギリスの平和と豊饒が煌びやかに予言され、エピローグへとつながる。ここでは、エリザベス礼讃だけにとどまらず、ユーモアを含ませるやわらかい女性賛美のことばで締めくくられる。
このことばが劇作を通しての、シェイクスピア最後のメッセージとなっている。